夕日の違い/婚活
マッチングアプリにて、キャップを被り、横顔の写真の彼に好印象をもった。
言葉遣いやメッセージの頻度も丁度良かった。
会う前、夕日が綺麗だったと、写真が送られてきた。
本当に夕日の写真を人に送る人が存在するのかと少し驚いたが、純粋な心の持ち主なのかなと引いたりはしなかった。
そしていよいよ会う日。お店で待ち合わせだった。
お店の待ち合わせということは、例え写真と見た目が違くても逃げられない。
先に入っているということで、怯えながら、店員さんに案内された席に座っていた男性は、明らかに写真と違った。この人と待ち合わせしていないですと思いながら、店員さんを見上げたが、座っている男性はこんばんは。と手をあげている。
写真より+10歳にみえる。
髪の毛はあまりなかった。
昔の写真を使っていたのかと思ったが、目や鼻、口、パーツが全て違う。歳をとるとパーツも変わるのだろうか。
"やられた。逃げられないじゃないか。"
写真と随分違いますね。と言いかけたが、ご飯を食べることにシフトした。
沢山頼みなという言葉に甘えさせてもらい、お酒を飲んだらあまりご飯食べないんだと言っている彼を無視して、ひたすら注文した。
沢山食べるのいいね。なんてのんきに彼は言っている。
彼は焼肉の会というものに入っているらしかった。
今度一緒に行こうよと言われたが、おでんを頬張りながら、あっはい。と短く伝えた。
そして、ネイル可愛いねと言い、手を触ってきた。
モテない人はすぐ手を触りたがる。
手を触られて、ドキドキすると思っているのだろうか。
困ったなと思っていたら、手相を見始めた。
なんか言っていたけれど、あまり覚えていない。
食べるものも無くなってきたので、私は仕切りに明日から旅行だから5時起きだと伝えた。
これは本当のことだったので、自信を持って力強く何度も伝えた。
すると彼は何かを察してくれた。さすが、年上は話が早い。
「ここは大丈夫だから、先に出ていいよ。」
その言葉を待っていたかのように、私は店を出た。
お店はコリドー街の中だったため、外は商社を狙っている女性と、セフレを探している男性で(偏見)で溢れていた。
ここから今日何組が出会い、LINE交換をするのだろう。
みんな出会いがあっていいなと羨ましく思いながら、早歩きで駅へ向かった。中々銀座駅にたどり着かないなと思っていたら、気がつくと大手町駅に着いた。
苛立ちが止まらないでいると、「今日はありがとう。今度焼肉行こうね」と彼から連絡が来ていた。
見た目が全てではないが、あまりにも写真詐欺すぎた。中身もきっと普通なのだろう。ただ、写真詐欺すぎた。
後日、また夕日の写真が送られてきた。
どんだけ夕日に直面するんだよ。そんな夕日みることあるのか。
会う前の夕日と会った後の夕日。
同じ夕日とは思えなかった。
返事をしていなかったが、何度も連絡が来た。
少し怖くなってそっとブロックをした。
私も写真の加工に気をつけながら、今後もやっていきたいと思った。
おわり。