嘘とうどん/婚活
婚活パーティーで出会った人の話。
1回目の食事で焼き肉に行った。
焼き肉に行っていつも思うことは、テーブルにある排煙フードが向かいの人の顔をふさいで話しづらいなということ。
今回も排煙フードに邪魔されながら、ぎこちなく肉を焼いていった。
優しく、穏やかな人だった。
この人と付き合ったら波のない、ゆったりとした関係を築けると思った。
ただ、惹かれなかった。
優しく穏やかな人を求めていたはずなのに、なぜだか惹かれない。
でも彼を切らしてはいけないと思い、次の会う約束をした。
そう、うどんを食べに群馬県に。
私は正直うどんがあまり好きではない。
彼はうどんが好きだと言った。話を合わせなければと思い、私も大好きだと言ってしまった。
「群馬県にある水沢うどん知ってる?よかったら一緒に行こうよ。」
うどんが好きではないので、知るはずもなかった。
2回目にして群馬県に遠出はかなり緊張ものだが、了承した。
当日、車で私の最寄りの駅まで迎えに来てくれた。
SAでスタバに寄り、コーヒーを買ってくれた。
そしてそして2時間程経ち、噂のうどん屋についた。
うどん屋と思えない立派なお店だった。
吸いなれないうどんを食べ、お店を出る。
ここからだ。まだお昼。私たちはこの後の予定を全く立てずに行動していた。
群馬県について全く調べてこなかった自分を恨んだ。
そして神社に行った。神社といっても境内を30分程歩いた。というか登った。
道中に七福神が隠れているとのことなので、はしゃぎながら探したが、4人しか見つけられなかった。
ちなみに彼は、すでに水沢うどんもここの神社も来た事があった。
同じルートを2度も・・と思いつつ、神社をあとにした。まだ昼過ぎ。
ロックハート城という所へ行った。
観光名所だが、絶対写真と現物違うパターンだなと思いつつ、それは現実となった。
コスプレの貸し出しがあり、城の前で写真を撮れるのが名物っぽかった。
カップルや家族が楽しそうに写真を撮っている。
ここは、付き合いそうな二人や付き合っている二人がくる所だなと思った。
なんとも気まずい雰囲気が流れながら、写真の迫力と違う城を見上げながら、これも観光の醍醐味だよね伝えた。
城をあとにするともう夕方だったので、東京へ戻ることに。
帰り道はひたすら眠たかった。
昔、会社の上司が運転する助席に乗っているときのことを思い出した。
その当時の上司は、移動の途中でBOOKOFFに寄り、映画のDVDを買い、車の中で流してくれていた。
いい上司だったなと思い出しながら、瞼をこじ開けていた。
あまり話すタイプではない彼と2回目のお出かけで、ドライブはきつかった。
次はジンギスカンを食べに行く約束をして、解散した。
結果、ジンギスカンを食すことはなかった。
1回目焼き肉、2回目ジンギスカン、3回目群馬だったら何か変わっていただろうか。
七福神全員見つけられていたら、彼の私服に驚くこともなかったのだろうか。
今出会っていたら彼の優しさの貴重さを大切にできていたと思う。
そしてあれ以降、うどんを食べていない。
おわり。