華奢鳥/婚活
マッチングアプリで、メッセージをあまりしないまま、素性がわからないまま、会うことになった。
1月2日12時。
果たしてお店は空いているのかという不安を抱きながら、待ち合わせ場所へと向かう。
気になっているカフェが何軒かあるという。果たしてお店は空いているのだろうか。何度も不安に思う。
服装は、グレーのタートルネックに黒のコート、黒のトートバッグですと詳しく教えてくれた。
恐らく彼だろうという人がいた。上記の服装よりもまず、3センチ程のヒールのあるショートブーツが目に入った。
それだけ教えてくれればすぐに分かったのにと思った。そこは伝えないということは、恥ずかしさがあったのだろうか。
マスクをしているので、顔の全貌はわからなかったが、目と髪型は写真通りだった。そして華奢だった。
気になっているというカフェへ向かうが、案の定空いていなかった。何軒か行ってみたが、お店の前に着く3メートル手前で空いてないことがわかった。
結果たどり着いたのはコメダ珈琲だった。
いよいよマスクを外す瞬間。マスクの中の彼は、鼻がulikeで加工したように細く、顎がなく、唇が薄かった。鳥の様だった。
お互いのことをあまり知らなかったため、会話は弾んだ。両隣の席には近所に住んでいるのであろう、30代のカップルが座っていた。カップルはあまり会話をしていなかったが、空気で会話をしていて落ち着いていた。
長年付き合っていそうなカップル達に挟まれた、初対面の私たち。初対面だから声のトーンもあがる。
話の内容もいかにもだった。
狭いテーブルには、サンドウィッチとパスタとコーヒー2つ。窮屈さと私たちのテンション。もう何もかもが違う気がした。
コメダ珈琲を出て、散歩をした。空いているはずのないカフェを目指しながら。
帰りたいなと思った所で、ちょうど地下鉄の入口があった。
「今日は解散しますか。」私の言葉に彼はそうですね。とすぐ様返答した。ようやく息が合ったなと思った。
話は弾んだはずなのに、色々話したはずなのに、頭に入っていなかった。結局、彼のことはあまり知らないまま、それ以降、彼と連絡をとることはなかった。
おわり。